秋の怖い話(座敷童を見た時の話)
先日、私の怖い体験のお話を書きました。書いていてとても楽しかったので、今日も数少ない体験の中から1つご紹介したいと思います。
これは10年以上前の出来事です。
ある時、母が、とある温泉宿で集まりがあるので送迎を頼まれました。その温泉街の近くにはスーパー温泉のような公営の施設があるので、温泉好きな私は2時間ほどそこで温泉にゆっくりくつろぎながら母を待つつもりでした。お昼頃の集まりだったと思います。
高台にあるその温泉施設は広くてきれいで、休日でも込み合っていないので快適に過ごすことができました。
母を待たせないようにと少し早めにお風呂から上がり、髪を乾かしたりメイクをしたりしている時に、ふと鏡越しにお風呂場の入り口に女の子が立っているのが見えました。風呂場の入り口の横にはベビーベッドも見えました。
女の子は肩少し上の長さのおかっぱ頭でうつむいていているので表情は見えません。その女の子は裸でしたが、なぜか靴下だけを履いていました。パステルピンクと薄い水色の縞々の靴下でふかふかモコモコした柔らかそうな靴下です。
どうしたんだろう、なんであんなところに立っているんだろう、なんで裸に靴下?などととても気になって、自分の目で確かめようと女の子の方へ振り返りました。
振り返ってはみたものの、そこには、鏡の中の女の子の姿どころかお風呂場の入り口も見えませんでした。
私はとても驚きました。
女の子の立っているお風呂場の入り口は、私のいる場所からは見えない場所で、私の目に入るのは並んだロッカーばかりでした。
もう一度確認しようと鏡を見ると、やっぱり女の子とお風呂場の入り口が見えます。
そして、もう一度後ろを振り返ってもやはりロッカーしかないので、席を立ってお風呂場の入り口が見える場所まで移動し確認したところ、そこにはもう女の子は立っていませんでした。
その後、ふたたび鏡のある所に戻ってみたら、鏡の中に見えていた女の子とお風呂場入り口はもうなくなっていて、鏡に映っているのはロッカー群のみとなっていました。
そうなんです、私のいた位置からはお風呂場の入り口は見えず、鏡にも写らない場所にあったのです。
その瞬間、さっきまで見えていた鏡の中の世界が現実ではないことがわかりました。
そして、気が付いたことがもう一つ・・・。
お風呂に入るためにコンタクトを外していたので、目の悪い私に、女の子の様子がハッキリと見えるはずはありませんでした。
うつむいていたので女の子の表情は見えなかったもの、髪型や艶感、裸の体、靴下のもこもこフワフワした質感、ベビーベッドの模様まで見えていました。冷静に考えたらありえないことです。
未だに信じられないような体験で勝手に座敷童と呼んでいますが、うつむいて表情が見えなかった女の子が、もし顔を上げていたら・・・想像すると怖くなります。顔を見ていたら、座敷童とは呼べなかったもかもしれません。